不動産の相続の進め方

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更新日:2022/10/17

不動産の相続の進め方

不動産の相続の進め方

1 不動産を相続する際の流れ(遺産分割協議・移転登記・相続税の納付)

ご親族から土地や建物を相続する場合、どのような手続を取ればよいでしょうか。
不動産相続の手続の一般的な流れは、

①相続人による遺産分割協議
②所有権(持分)移転登記
③相続税の納付

というものです。

①の「遺産分割協議」は、相続人各人が遺産をどのように分配するかを話し合う手続です。単なる井戸端会議ではなく法律が効力を認める重要な協議となります。この記事をご覧の方が、遺産の中で特に不動産を取得することを希望されているのであれば、他の相続人との話し合いをまとめ、あなたがその不動産を相続する(所有する)ことを認めてもらう必要があります。話がまとまった際は、「遺産分割協議書」という書面を作成し、協議の結論を記載することとなります。

②遺産分割協議がまとまった際は、法務局に対して相続を原因とする所有権移転登記の申請を行います。「登記」というのは、簡単にいうと法律上の権利関係を政府が公に情報共有する制度です。不動産登記が有名ですが、人々は、土地や建物の権利が誰かを知りたいときは、法務局で登記を確認することで権利者の氏名・住所を知ることができます。遺産分割協議がまとまった際は、新たに所有者が変わったとして、この不動産登記申請を行うのが一般的です。権利に関する登記は義務ではありませんが、これを怠ると、あなたがその不動産の所有者であることが社会に対して示されなくなります。そうすると、今後思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があり、状況次第ではその不動産の権利を失うことにもなりかねません。特にこだわりがなければ、不動産を相続した際は速やかに所有権移転登記を行うことをお勧めします。

③また、遺産の総額次第では、相続税の納付義務が生じる場合があります。相続税が発生するのは、正味の遺産額が基礎控除額を超える場合です。基礎控除額は、「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」です。正味の遺産額とは、遺産総額に相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の合計から、非課税財産・葬式費用・債務を控除し、そこに相続開始前3年以内の贈与財産を加えたものとなります。相続税が発生する場合、相続開始を知った時点(通常は、被相続人の死亡日)の翌日から起算して10ヶ月以内に相続税の申告と納税を行う必要があります。なお、相続人が複数いる場合、各相続人に対して相続税の納付義務が課されます。

2 不動産を相続する際にかかるお金

不動産の相続に際してかかるお金は、遺産分割協議に要する費用・登記費用・相続税の3点です。

このうち、遺産分割協議に要する費用はケースバイケースとなります。話がすんなりまとまるのであれば、特段の費用は必要ありません。遺産分割協議書には印紙の貼付が必要ないので印紙税もかかりません。もっとも、遺産分割協議がまとまるまでの間の不動産の管理費用は必要です。例えば、遺産の中の不動産が収益用のマンションで従前から管理会社に管理を依頼していた場合には相続発生後も管理委託料が発生します(原則としては、法定相続人が法定相続分に応じて負担すべきものです。)。また、協議をまとめる過程で遺産を構成する不動産の内の一部を売却して現金を作る必要がある場合などでは、不動産売却に要する費用(不動産仲介手数料、建物除却に伴う費用等)が発生します。協議自体がまとまらない際は、遺産分割調停・遺産分割審判という裁判所での手続を行う必要がありますので、そうした手続費用も発生します。

登記費用は、法務局に納める登録免許税(印紙を通じて納めます。)が発生します。その他、弁護士・司法書士といった専門家に登記手続を依頼した際は、彼らの報酬も発生します。

正味の遺産額が基礎控除を超える場合には相続税の納付が必要になることは先ほどお伝えしたとおりです。

3 不動産を含む遺産分割の中で決めるべきこと

遺産分割協議の内容は色々自由に設計することができますが、どのような設計にするにせよ、各遺産にのうちどれを、誰が、どのように取得するかは明確に定める必要があります。読者の方が不動産の取得を考えているときは、どの不動産なのかを登記情報をもとに「特定」する必要があります。土地の場合は、①所在、②地番、③地目、④地積で特定し、建物の場合は、①所在、②家屋番号、③種類、④構造、⑤床面積で特定するのが通常です。また、どのように取得するかというのは、所有権をそのまま包括的に承継するか、あるいは複数の相続人によって共有にするかといった問題です。共有にする場合は、共有者各人の持ち分を定める必要があります。

相続人間での意見が対立し、協議がうまくまとまらない際は、遺産分割調停・遺産分割審判といった裁判所の手続を通じて結論を出すことになります。これらの手続では法的観点から結論を導くこととなります。

4 名義変更を忘れずに!相続登記の流れ

不動産登記手続は、法務局に対する申請によって行います。登記は、相続人全員で共同して行うのが原則です。弁護士や司法書士を代理人として登記手続を行う際は、相続人全員の委任を受けて手続が行われることになります。

相続を原因とする所有権移転登記手続では、①登記申請書、②登記原因証明情報を提出して行います。登記原因証明情報としては、相続関係を証明する資料(法定相続情報証明書や関係戸籍一式と相続関係図)と遺産分割協議書を添付することになります(遺産分割協議書上に特定不十分等の不備がある場合は受理してもらえません。)。

5 不動産の相続でよくあるトラブル・困ったケース

不動産の相続ではトラブルがよく生じます。例えば、複数の相続人が同じ不動産を欲して譲らない場合、協議でまとめることは難しくなります。この場合は、遺産分割審判といった裁判所の裁判を受けることで結論を出すことになります。この場合、従前の管理状況や各相続人の必要性の高低、代償金(相続人各人の取分を調整するための現金)を用意できるか否かといった観点から判断されることになります。

別の例では、不動産が自己居住用ではなく収益用物件(賃貸して賃料を得る不動産)であった場合、相続開始後に相続人のうち一部の者が当該不動産の管理を行い、相続開始後に発生した賃料収入を独占してしまっていることが少なくありません。しかし、遺産を構成する不動産から生じる賃料は、各相続人が法定相続分に応じて権利を持ちます。したがって、事実上不動産を管理している一部の相続人がその全部を保有することは法的に許されません。各相続人は、その事実上の管理者に対し、不当利得返還請求として相続開始後の賃料のうち、自身の法定相続分に該当する部分の支払いを求めることができます。もっとも、この権利は10年間の時効にかかります。10年間放置した場合、その後では返還を求めることができなくなりますので、注意が必要です。

6 不動産相続は誰に相談するべき?

不動産の相続で分からないことがあれば、まず、弁護士のご相談下さい。弁護士であれば、紛争性の有無を問わず、相続問題について全般的に適切な対応をご提案差し上げることが可能です。また、相続人を確定できていない段階、遺産の全容が不明である等、相続問題の前提部分の情報が不確かな場合でも、弁護士であればご依頼人に代わり、これらを調査することが可能です。

法律問題は、早くご相談いただければその分だけ後々に有利になり、あるいは危機的な状況を避けられることが少なくありません。当事務所には相続問題を集中的に扱う家事部という部署を設け、そこに在籍する弁護士・事務職員は相続に関して精通した知識を有しております。些細な事でも構いません。お悩み事、専門家の意見を尋ねてみられたいことがあれば、是非お気軽に当事務所にお電話下さい。

不動産に関するお悩みについてご相談をされたい方は、是非お気軽に弁護士法人グレイスにご連絡下さい。
初回相談は60分無料で、来所が困難な方は電話やZOOMを利用したオンライン相談も受け付けております。まずはお電話でお問合せください。
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【著者情報】


家事部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:45028)

2007年 慶應義塾大学法学部 卒業

2009年 慶應義塾大学法科大学院法務研究科 修了

2010年に司法試験に合格し、東京都内の法律事務所を経て、2014年より弁護士法人グレイスにて勤務

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