数次相続事案において、既に時効が完成してしまった遺産から生じる賃料(収益用不動産)を回収した事例

12new 数次相続事案において、既に時効が完成してしまった遺産から生じる賃料(収益用不動産)を回収した事例

  • 被相続人との関係

  • 相続人の人数

    2〜10名

  • 主な遺産

    不動産

  • 遺言の有無

  • 主な争点

    その他

  • 分割方法

    現物分割

  • 手続

    調停

相続関係図

被相続人:祖母  
相続人:叔父(二男)、孫3名(長男の長女・二女・三女)

相続関係図

※一部簡略化しております。

事案

資産家で複数の土地や収益用建物(賃貸用建物)を所有する依頼人祖母を被相続人とする相続事案。
祖母には、長男・二男の2名の子がいましたが、長男は祖母の相続開始以前に他界されていたため、長男の3人の娘が代襲相続しました。
もっとも、その後、長年に渡り状況を放置され、相続開始から12年が経過した時点でこの3名の娘様が叔父を相手方として遺産分割調停を申し立てられました。
その後、相手方代理人に弁護士が就き、局面が難航したため当事務所にご相談に来られたのが、当事務所介入の経緯です。
ご依頼人の方々は、当初、代理人を就けずにご自身で調停に臨まれており、その際の論点は、6つの土地とその上に存在する5棟の収益用建物(賃貸用建物)の分配をどのようにするかという問題でした。
叔父側は5つの建物のうち4つを自分が取得して残り1つを依頼人側で分配することを主張し、当方の依頼人側が3つを取得し、残り2つを叔父側が取得することを主張しておられました。

解決

ご依頼人の希望に沿い、4つの収益用建物を長女・二女・三女・叔父による1つずつの分配とし、また、その敷地についても、土地の所在位置に照らして各々適切な面積を取得し、差分は代償金の授受することで調停が成立しました。
また、祖母が他界されてから10年以上に渡り、叔父が取得していた賃料の法定相続分についても必要経費を差し引いた残額(800万円以上)を遡って支払ってもらいました。

  • 弁護士介入前

    法定外の相手方主張による遺産分割請求

  • 弁護士介入後

    依頼人希望通りの遺産分割、さらに時効完成部分の相手方収益800万円の回収

弁護士の視点

この事件では、相手方である叔父側が、長男(依頼人の父)の生前の言葉として叔父側に有利になる供述やノートが存在したことを盛んに主張され、議論が混乱しておりました。
当事務所の介入後は、まず、相手方が提出するノートが遺言の要件を持たず法的に意味を為さないことを主張し、法定相続分に従った分割に議論を導きました。
次に、収益用建物の割付については、相続人間の公平や、代償金の支払能力、従前の管理態様や今後の管理意思等の点を丁寧に主張することで裁判所の理解を得て、最終的には依頼人の希望である3棟の建物取得に至りました。
また、建物の敷地となる土地については適切に分筆をして割り付けなければなりませんが、当方が推薦する土地家屋調査士と相手方の推薦する土地家屋調査士が異なったため、競争入札させ当方推薦の土地家屋調査士に依頼することとなったため、円滑にコミュニケーションを取りながら、適切な分筆・境界確定に至りました。
その他、相手方は、その他にも寄与分や特別受益等の複数の法的主張を行っておりましたが、これらも全て争い、最終的にはそれらの主張の一切を排斥することができました。
最後に、本件で最も良かったのは、祖母死亡後に相手方が取得していた遺産である収益用建物から生じた賃料収入の着服部分から経費を差し引いた全ての金額(金額にして800万円以上)を回収できたところでした。そのうちの一部は、既に時効が完成しているものでしたが、相手方から時効の主張がなかったため、当方も特に指摘することなくそのまま全額回収に至りました。この「遺産が生み出す賃料収入」の問題は、本来は、遺産分割の対象事項ではなく、地方裁判所に別途訴訟を提起しなければならない問題です。ただ、本件では調停を上手く利用しながら一回的に解決することでクライアントが負担する弁護士費用や手続の時間的負担を大幅に圧縮することができました。また、本来、法的には回収し得ない時効の完成部分についてまで回収し、数百万円に及ぶ超過利益をクライアントに提供できた点は、非常に大きな収穫だったと思います。