相続法改正のご紹介

相続法改正のご紹介

2019.02.25 弁護士 茂木 佑介 ニュースレター62号掲載

相続法改正のご紹介

昨年よりニュースや新聞等で耳にしたことがある方も多いかもしれませんが、相続分野に関する法律が一部改正され、2019年7月1日から本格的に運用がスタートします。相続分野に関する法律は昭和55年以来大きな改正がありませんでしたが、近年の著しい高齢化に伴い、様々な不都合が生じてきていたことから、この度の大規模改正となりました。以下、改正点の内、特に大きな目玉となっている点について簡単にご紹介させていただきます。

1. 配偶者居住権について

例えば、相続人が配偶者(妻)とお子様3名のケースで、遺産が不動産のみで現預金が殆ど無かった場合、従前は、妻が自宅を取得する為には、自宅評価額の内、自身の法定相続分を越える分に相当する額をお子様に対して「代償金」として支払う必要がありました。

もちろん、配偶者とお子様の関係が良好な場合であれば、お子様が「自分たちは何もいらないから、家はお母さんがもらって良いよ。」という話になるのでしょうが、必ずしもそのような微笑ましいケースだけではありません。特に、妻がいわゆる後妻で、お子様が前妻との間の子である場合はなおさらです。

妻が手持ちの現預金等から代償金を捻出できれば良いのですが、そうでない場合はやむを得ず自宅を売却し、金銭分割するなどの方法で対応せざるを得ず、結果的に自宅を失うという結果になりかねません。

そのような事態を可能な限り避けるべく、今回の改正では、一定の要件を満たした際に配偶者がそのまま当該自宅に住み続けることができる「配偶者居住権」という権利が新設されました。

2. 自筆証書遺言について

これまで、自筆証書遺言を作成するにあたっては、財産目録も含めてその全てを自署する必要がありました。もっとも、財産が多岐にわたる場合、作成の負担が大きくなりかねません。何より、これだけパソコン・ワープロが普及した中で、全てを自署させること自体がナンセンスです。そこで、今回の改正では、財産目録に限り自署でなくても良いことになりました(ただし、各頁に署名押印は必要です)。

3. 相続人以外の親族の貢献に関する金銭請求権(特別の寄与)

従前より、介護等で特に被相続人に貢献した者に対しては「寄与分」として考慮がなされていました。もっとも、この制度はあくまで「相続人」が直接貢献した場合を想定しており、例えば長男の妻が介護に熱心に取り組んでいた場合等は考慮されにくいという不都合がありました。そのような不都合を踏まえ、今回の改正では、相続人以外の親族が介護等の「特別の寄与」をしていた場合、相続人に対して直接金銭請求権が認められる場合があることとなりました。