相続の限定承認とは?手続きと相続放棄との違いをわかりやすく解説
更新日:2024/11/11
限定承認とは
限定承認という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。
限定承認とは、承認・相続放棄の他に存在する相続人の地位の承継自体に対する意思表時のことです。
相続が開始されると、法定相続人たちは、
- ①単純承認
- ②相続放棄
- ③限定承認
のうちいずれかの態度を選択することとなります。
「選択する」と言っても、原則は承認ですので、途中で遺産の処分行為を行ったり何もしないまま熟慮期間を過ぎてしまった場合は、承認したものと法律上取り扱われます。
限定承認は手続きが煩雑でほとんど利用されていない
さて、承認・相続放棄・限定承認という3つの手続ですが、限定承認は、承認・相続放棄と比べ、利用されている数が著しく少ないと言われています。
この一つの理由は、その手続の煩雑さにあると言われています。
まず、限定承認は、相続人全員で共同して家庭裁判所に申述する必要があります。
つまり、一人でも連絡がつかない人や協力的でない人がいれば、限定承認は行うことができません。
次に、熟慮期間内に財産調査を行い、財産目録を作成して家庭裁判所に提出する必要があります。
その財産目録に悪意で財産の一部を記載しなかった場合には法律上単純承認したものと扱われることになります。
限定承認の申述を行った者はその5日以内にすべての相続債権者及び受遺者に対して限定承認したことと、2ヶ月以内に請求申出の催告を公告しなければなりません。
こうした手続的な負担が限定承認を利用しづらくさせていると言われています。
少し古いデータですが、平成26年の日本全国の裁判所が受け付けた相続放棄の数が18万2089件であるのに対し、限定承認はわずか770件だけでした。
統計に照らしても、限定承認が相続放棄と比べてほとんど利用されていない手続であることが分かります。
限定承認の効果
限定承認の法的効果は、簡単にいうと、遺産のうちプラスの財産(預貯金や不動産)でもってマイナスの財産(債務)を清算し、それでも余っている財産があればその範囲に限定して相続するというものです。
つまり、マイナスの財産(債務)についてプラス財産の限度でのみ弁済を行うため、相続人本人の財産が損なわれることがないというのがこの制度の特徴です。