相続人全員が相続放棄するとどうなるの?
更新日:2024/11/11
相続の順位
相続では、遺言の有る無しが最初に問題となります。
遺言があれば原則的に遺言に従った相続がなされます。他方、遺言がない場合には法律の定めた順番で相続人が決まります。相続には法律が定めた「順位」というものがあるのです。
法律が定めた順位は、1位から3位までです。1位は「子」、2位は「直系尊属」(親や祖父母など系譜上の祖先に当たる直系の血族)、3位は兄妹姉妹です。全て被相続人から見た関係を指しています。ちなみに「配偶者」は存在する最上位の相続人と同順位となります。子がいれば子と同順位、子がおらず直系尊属が相続人となる際は直系尊属と同順位といった具合です。
後順位者は、先順位者がいない場合に初めて相続人となります。ですので、子・直系尊属・兄弟姉妹の全員が相続開始時点で生存している場合、第1順位である「子」が相続人となり、第2順位の「直系尊属」や第3順位の「兄妹姉妹」は相続人になりません。逆に、相続開始時点で被相続人に「子」がいなかった場合、「直系尊属」がいれば直系尊属が、直系尊属もいなければ「兄妹姉妹」が相続人になります。
なお、先ほど触れたとおり、相続放棄をすれば最初から相続人でなかったことになります。そのため、子が相続放棄をすれば直系尊属が相続人に、直系尊属も相続放棄をすれば兄妹姉妹が相続人となります。
相続人全員が相続放棄した場合どうなるか
では、「子」「直系尊属」「兄妹姉妹」のすべてが相続放棄を行った場合、どうなるのでしょうか。結論からいえば、相続人が誰もいない状態になります。いわゆる「相続人不存在」の状態です。
相続人が存在しないこと自体は珍しくありません。例えば、兄妹がいない人が結婚せず子ももうけないまま高齢に達し、両親・祖父母は既に他界している中で死亡した場合、法定相続人である「子」「直系尊属」「兄妹姉妹」がいずれも存在しないこととなります。このように相続人不存在という現象は決して珍しいものではありません。世の中には常に一定の割合でこの現象が起こります。
相続人不存在の場合の法律関係
相続人不存在の場合、その後の法律関係はどうなるのでしょうか。
例えば、被相続人に対してお金を貸していた人が返済を受ける前に相続が開始された場合(被相続人が死亡した場合)、お金を貸した人は何もできなくなってしまうのでしょうか。
答えはノーです。被相続人に財産がある限り、お金を貸した人は、家庭裁判所に対して相続財産清算人の選任を申し立てることによって、返済を受けることができます。
相続財産清算人とは、令和5年4月1日施行の法改正以前は「相続財産管理人」と呼ばれていました。被相続人が生前保有していた財産(プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。)は「相続財産法人」という形態を取り、家庭裁判所から選任された相続財産清算人がその財産を管理します。
十分な財産がある場合、債権者がいれば彼らに弁済し、特別縁故者がいる場合には家庭裁判所の審判で定められた額を特別縁故者に分与し、それでも残りがある場合は国庫に帰属させます。国庫に帰属させる場合でも、不動産のような有体物については可能な限り換価(売却)して現金化を試みるのが通例です。
なお、相続財産清算人は、何もせずに勝手に選任されるものではありません。「利害関係人」(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者など)または検察官から、家庭裁判所に対し、相続財産清算人の選任申立てがされ、これに応じて裁判所が審判を下すことで初めて選任されます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。この記事では、相続人が全員相続放棄を行った場合の法律関係について説明を行いました。
弁護士法人グレイスは、相続の専門家として相続放棄の手続を熟知しております。相続放棄をお考えの方は、お気軽に当事務所にご相談下さい。初回法律相談は30分無料で承っております。