騙されて相続放棄してしまった場合、相続放棄を撤回できるか
更新日:2024/11/07
1度行った相続放棄は取り消せないのが原則
相続放棄は、重要な法律関係に関する意思表示です。第三者の利害関係に大きく関わる問題ですので、安易な撤回は認められません。これは、簡単に想像できる結論と思います。
法律上も、熟慮期間(相続開始を知った時から3ヶ月間)内であっても1度相続放棄を行った場合、それを撤回することはできない旨が明記されています(民法919条1項)。
逆に、一度相続を承認した場合、相続放棄の場合と同様、それを事後的に撤回することはできないのが原則です。
例外:民法総則等による取消し
一方、法律は、やむを得ない理由で誤った判断を行ってしまった者を救済する道を残しています(民法919条2項)。具体的には、詐欺・錯誤・強迫などによって誤って承認・放棄を行ってしまった場合です。
「詐欺」や「強迫」は分かり易いと思います。騙された場合や、脅されてやむなく相続放棄させられた場合のことです。「錯誤」というのはあまり聞きなれない言葉からもしれませんが、ごく簡単にいえば「勘違い」です。
借金しかないと勘違いして相続放棄したものの、実際には大金が相続財産として存在していたといったような場合です。
しかし、これらの取消しは、本人が「脅された」、「強迫された」、「勘違いだった」というだけで認められるものではありません。あくまでも法律で定められた要件を満たした場合に限って取消しが認められます。
取消しが認められるか否かは法律判断そのもので、相応の知識と経験を要します。
特に、錯誤(勘違い)を理由とする取消が認められるか否かは、過去の裁判例とその後の法改正の経緯などもあり、非常に高度な知識と経験を要することとなり、一般の方が合理的な見通しをつけるのは難しいかと思います。
まとめ
ここまで説明したとおり、一度行った相続放棄や相続の承認は原則として撤回できませんが、取消しができる場合があります。
もし、誤って相続放棄・承認を行い悩まれている方がいれば、一度、弁護士に相談されてみることをお勧めします。