財産分離とは?限定承認との違いも含めてわかりやすく解説

投稿日:
更新日:2024/11/07

財産分離とは

 「財産分離」と呼ばれる相続法上の制度をご存知ですか。

 財産分離とは、相続財産と相続人の固有財産とが混在することによって債権者等がその債権の回収について不利益を被ることを防止することを目的とした制度です。

 相続債権者、受遺者、相続人債権者など法律が認める者の請求により、相続財産が相続人の固有財産と分離して管理され、その後清算が行われます。

 財産分離は、家庭裁判所の審判手続によって行われますが、申立ての相手方は相続人となります。

 財産分離が行われると、相続財産については相続債権者(被相続人対する債権者)や受遺者が相続人債権者(相続人に対する債権者)に対して優先して弁済を受けることができ、逆に、相続人の固有財産については、相続人債権者が相続債権者や受遺者に対して優先して弁済を受けることができます。

 また、マニアックな話ではありますが、財産分離が行われると、相続人が被相続人に対して有した権利義務も消滅しなかったものと扱われます(通常、相続人が被相続人に対して有する権利義務は相続によって消滅します。)。

限定承認との違い

 財産分離は、一見すると限定承認と非常によく似た制度です。しかし、限定承認は、清算の対象が相続財産に限定され、相続債務・遺贈の弁済を相続人の固有財産から行うことがない点で財産分離と異なります。

 財産分離では、相続人の固有財産も相続債務・遺贈の引当てとなり、この点で制度的に大きく異なります。

 なお、財産分離の申立てを行う権限のある者は、相続人が相続放棄や限定承認を行った場合であっても、財産分離の申立てを行うことができます。

第1種財産分離と第2種財産分離

 財産分離のうち、相続債権者または受遺者の請求によってされるものを「第1種財産分離」と言います。請求期間は、相続開始の時から3ヶ月です。

 他方、財産分離のうち、相続人債権者の請求によってされるものを「第2種財産分離」と言います。請求期間は、相続人が限定承認をすることができる期間または相続財産が相続人の固有財産と混合しない間です。

財産分離制度の現状

 財産分離制度が用いられることは極めて稀です。限定承認も稀ですが、財産分離はそれに輪をかけて利用されることの少ない制度です。少し古いデータですが、最高裁判所の司法統計によれば、平成19年から平成28年度の10年案における利用者は全国の家庭裁判所を対象としても年間0〜4件と極少です。内容が非常に複雑なことと、相続財産が債務超過に陥っている場合には、別途「相続財産の破産制度」があるため、財産分離制度による必要がないことが理由とされています。

まとめ

 いかがでしたでしょうか。今回は、財産分離というかなりマイナーな手続を取り上げました。

 当事務所は相続問題を得意とする弁護士が多数在籍しております。相続放棄をお考えの方は、お気軽にご相談ください。初回法律相談は30分間無料で承っております。

【著者情報】


家事部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:45028)

2007年 慶應義塾大学法学部 卒業

2009年 慶應義塾大学法科大学院法務研究科 修了

2010年に司法試験に合格し、東京都内の法律事務所を経て、2014年より弁護士法人グレイスにて勤務

プロフィールはこちら>>