相続放棄の熟考期間とは?その期間と期間を過ぎてしまった場合のについて解説
更新日:2024/11/07
熟慮期間とは
熟慮期間とは、相続が開始した後、相続人が相続を①承認するか、②相続放棄するか、あるいは③限定承認するかといった態度を決めるための期間として法律が認めるものです。
熟慮期間は、原則として相続開始を知った時から3ヶ月間です。相続は承継するのが原則であるため、この期間中に相続放棄を行うか、限定承認を行うかしなければ、自動的に承認したものと扱われます。
熟慮期間中に態度を決めることができず、そのことに合理的な理由がある場合は、管轄の家庭裁判所に熟慮期間の伸長審判を申し立てることで期間の延長を認めてもらうことができます。
【原則】熟慮期間経過後の相続放棄は認められない
では、熟慮期間を過ぎてしまった後に相続放棄を行うことはできるのでしょうか。忙しい現代人であれば、しなきゃしなきゃと思いつつも目の前の仕事に追われるうちにいつの間にか3ヶ月を過ぎてしまっていた、なんてことあり得ますよね。
しかし、残念なことに熟慮期間を過ぎてしまってからの相続放棄は認められないのが原則です。それを認め出せば、法律で定めた期限の意味がなくなってしまいますので、これはある意味しかたのない結論ですよね。
【例外】一定の要件を満たせば相続放棄できる
ただし、最高裁判所の判例は、一定の要件のもとで相続人の保護を図っています。
すなわち、昭和59年4月27日付けの最高裁判所第2小法廷判決(民集38巻6号698頁)は、「相続人が上記各事実を知った場合であっても、上記各事実を知った時から三か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において上記のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、相続人が上記各事実を知った時から熟慮期間を起算すべきであるとすることは相当でないものというべきであり、熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識し得べき時から起算すべきものと解するのが相当である。多額の被相続人名義の債務が後日判明し,その存在を知っていれば当然相続放棄するのが通常と思われる場合には、相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識したとき、または認識すべき時から進行する」と判示したのです。
一般の方には少し分かりづらい表現かもしれませんが、要するに、相続人が、被相続人には相続財産(債務を含む)がまったく存在しないと信じ込み、双方の生活状況に照らして相続人が被相続人の財産状況を調査することがかなり難しく、プラスもマイナスも何もないと信じたとしてもやむを得ないよねと言える事情があれば、熟慮期間は、債務の存在を知ったときから起算されると判示したのです。
最高裁が挙げたような事情がある際は、負債の存在を知った時から3ヶ月以内であれば、熟慮期間を過ぎていたとしても相続放棄を行えることになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。相続放棄しないまま過ごしていたところ、後から多額の借金が発覚したというような危機的状況についての最高裁判例を紹介しました。この判例のポイントは、「相続財産がまったくないと信じていた」という点です。1000万円の預金を相続した後、3000万円の負債が発覚したというようなケースには当てはまりませんのでご注意ください。
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