相続放棄の必要書類について兄弟・子・孫などの続柄別に弁護士がわかりやすく解説

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更新日:2025/01/22

 相続放棄は、原則として被相続人が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てを行う必要があります。その際には、続柄によって必要となる書類が異なるため、正確な情報を把握することが重要です。

全ての続柄に共通して相続放棄に必要な書類

 相続放棄の手続きを進めるには、家庭裁判所に提出する書類が必要です。基本的な書類としては、以下のものが共通して必要です。

相続放棄申述書

 相続人が相続を放棄する旨を記載する書類です。裁判所のホームページからダウンロードすることが可能です。また、相続放棄をする人によって様式が異なるため注意が必要です。

相続放棄をする人が成人の申述書相続放棄をする人が未成年の申述書

被相続人の住民票除票又は戸籍附票

 被相続人の最後の住所地を証明する資料です。なお、最後の住所地が住民票上の住所と異なる場合は、別途、最後の住所地を証明する資料を提出する必要があります。例えば、賃貸借契約書などがこれにあたります。

申述人(相続放棄をする人)の戸籍謄本

 被相続人との関係を証明するために必要です。申立人の戸籍も必要となります。相続放棄をする人の本籍地の役所で取得でき、郵送で取り寄せることも可能です。

 これらに加えて、続柄によっては特定の書類が必要になります。以下では、続柄別の必要書類について詳しく解説していきます。

続柄別:相続放棄に必要な書類一覧

配偶者の場合に必要な書類

  • ・被相続人の死亡記載のある戸籍謄本
  • ・婚姻届出受理証明書(必要に応じて)

 配偶者(夫または妻)が相続放棄をする場合、被相続人の死亡記載のある戸籍謄本が必要となります。すでに死亡届が受理されていれば、「申述人の戸籍謄本」に被相続人の死亡は記載されるため、先に述べた共通する3つの書類を提出するだけで問題ございません。

 また、配偶者が相続放棄をする場合、通常の戸籍謄本に加えて、被相続人と婚姻関係にあったことを証明する書類が必要となる場合があります。

子どもが相続放棄する場合の必要書類

  • ・被相続人の死亡記載のある戸籍謄本

 子どもが相続放棄をする場合、被相続人の死亡が記載された戸籍謄本が必要です。

 未婚で戸籍が被相続人と同一の場合は、子どもの戸籍謄本があれば新たに提出する必要はありません。

 養子縁組の場合には、養子関係を証明する書類も追加で求められる場合があります。

孫が相続放棄する場合に必要な書類

 被相続人の子どもが亡くなっている場合、被相続人の孫が相続人になります。これを代襲相続といいます。被相続人の子どもは被代襲者、孫は代襲者といいます。

  • ・被相続人の死亡記載のある戸籍謄本
  • ・被代襲者(被相続人の子=代襲相続人の親)の死亡記載のある戸籍謄本

 孫が相続放棄をする場合、被相続人の死亡が記載された戸籍謄本と合わせて、被代襲者の死亡記載のある戸籍謄本が必要となります。

 被代襲者の死亡記載のある戸籍謄本は、被代襲者の本籍地の役所で取得できます。

親が相続放棄する際の必要書類

  • ・被相続人に子どもや孫がいない場合
  • ・被相続人の子どもや孫の全員が相続放棄をした場合
  • ・被相続人の子どもや孫がすでに亡くなっている場合

において、親が相続人になります。

  • ・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • ・被相続人の子どもや孫の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本

 親が相続放棄をする場合は、共通の3つの必要書類に加えて、「被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本」と、被相続人の子どもや孫がすでに亡くなっている場合は、「被相続人の子どもや孫の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本」も必要です。

祖父母が相続放棄する場合の書類

  • ・被相続人に子どもや孫がいない場合
  • ・被相続人の子どもや孫の全員が相続放棄をした場合
  • ・被相続人の子どもや孫がすでに亡くなっている場合

において、親が相続人になりますが、親もすでに亡くなっている場合には、祖父母が相続人になります。

  • ・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • ・被相続人の子どもや孫の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • ・被相続人の親の死亡記載のある戸籍謄本

 祖父母が相続放棄をする場合には、共通の3つの必要書類に加えて、「被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本」と、被相続人の子どもや孫がすでに亡くなっている場合は、「被相続人の子どもや孫の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本」、そして「被相続人の親の死亡記載のある戸籍謄本」が必要となります。

兄弟姉妹の場合に必要な書類

  • ・被相続人の子ども、孫、親、祖父母が全員相続放棄をした場合
  • ・被相続人の子ども、孫、親、祖父母がすでに亡くなっている場合

において、兄弟が相続人になります。

  • ・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • ・被相続人の子どもや孫の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • ・被相続人の親の死亡記載のある戸籍謄本
  • ・被相続人の祖父母の死亡記載のある戸籍謄本

甥姪が相続放棄する際に求められる書類

  • ・被相続人の子ども、孫、親、祖父母、兄弟がすでに亡くなっている場合

において、甥姪が代襲相続人になります。

  • ・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • ・被相続人の子どもや孫の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • ・被相続人の親の死亡記載のある戸籍謄本
  • ・被相続人の祖父母の死亡記載のある戸籍謄本
  • ・被代襲者(被相続人の兄弟=代襲相続人の親)の死亡記載のある戸籍謄本

 代襲相続が発生したことを証明するため、被相続人の兄弟姉妹(=代襲相続人の親)が死亡したことを示す戸籍書類が追加されます。

相続放棄には収入印紙と郵便切手が必要

  • 収入印紙…申述人1人につき800円
  • 連絡用の郵便切手…400~500円

 相続放棄を申請する1人につき、800円分の収入印紙が必要となります。また、家庭裁判所からの連絡用として郵便切手400〜500円程度も必要となります。

相続放棄の手続きをスムーズに進めるためのポイント

 相続放棄は、被相続人が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に必要書類を揃えて提出することが重要です。

 特に、続柄によって求められる書類が異なるため、事前に準備をしておくことで手続きを円滑に進められます。

 もし手続きに不安がある場合は、家庭裁判所や弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。

【著者情報】


家事部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:45028)

2007年 慶應義塾大学法学部 卒業

2009年 慶應義塾大学法科大学院法務研究科 修了

2010年に司法試験に合格し、東京都内の法律事務所を経て、2014年より弁護士法人グレイスにて勤務

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