各種の遺言

各種の遺言

各種の遺言

第1 複数存在する遺言の類型

1 遺言の種類

遺言は、大きく普通方式遺言と特別方式遺言の2つに分かれ、さらにその中で細分化されます。

普通方式遺言には、自筆用証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種があります。

特別方式遺言には、死亡危急者遺言、伝染病隔離者遺言、在船者遺言、船舶遭難者遺言の4種があります。特別方式遺言は、緊急状況・隔離状況等の特殊な状況を想定した規定であり、現実にこの方式の遺言が為されることは極めて稀とされていますが、本サイトでは、これらの解説も行います。

2 各種の遺言における証人・立会人

(1)遺言ごとの証人・立会人の要否

先ほどのとおり、わが国の法律は、全7種の遺言を用意しています。このうち、証人・立会人が必要となるのは、以下のとおりです。

証人を要する遺言類型

遺言の種類 証人の数
公正証書遺言 2人以上
秘密証書遺言 2人以上
死亡危急者遺言 3人以上
伝染病隔離者遺言 1人以上
在船者遺言 2人以上
船舶遭難者遺言 2人以上

 

立会人を要する遺言類型

遺言の種類 立会人の数 立会人の属性
伝染病隔離者遺言 1人 警察官
在船者遺言 1人 船長または事務員

※成年被後見人が遺言を行う場合、その遺言類型に関わらず、医師2名の立会が必要となります。

(2)証人・立会人の欠如

証人・立会人の役割を担うだけの十分な判断能力がないと想定される者、あるいは、遺言内容に不当な影響が与えられる危険が認められる者については、証人・立会人となることができません(欠格事由)。

具体的な欠格者は、①未成年者、②遺言作成時点における推定相続人・受遺者及びそれらの配偶者や直系血族、③公証人の配偶者や4親等内の親族、書記及び使用人と定められています。

(3)欠格者が立ち会った遺言の効力

欠格者が立ち会った遺言は、様式違反に当たり遺言全部が無効となります。

もっとも、公正証書遺言については、欠格者が証人として立ち会っていたとしても他に2人以上の適格証人が存在しており、且つ、欠格者によって遺言の内容が左右されたり遺言者が自己の真意に基づいて遺言をすることを妨げられたりするなど特段の事情がない限り、作成手続に違法はなく、法的効力も有効と判断した最高裁判例があります。学説上は批判を向けられた判断であり、現在の公証実務では、欠格者の同席を認めないのが通例です。

第2 自筆証書遺言

1 自筆証書遺言の意味とメリット・デメリット

(1)自筆証書遺言とは

自筆証書遺言は、遺言者が全文・日付及び氏名を全て自書した上で押印して作成する方式の遺言です。公正証書と並び日本国内で最もポピュラーな形式の遺言です。

(2)自筆証書遺言のメリット・デメリット

自筆証書遺言には多くのメリットとデメリットがあります。

まず、メリットは、①ほとんど費用を必要としないこと、②他者の協力を必要としないこと、③遺言の存在を誰にも知られずに済むことの3点です。

多方、デメリットとしては、①方式不備による無効のリスクが高いこと、②遺言書が誰にも発見されないままとなる危険性があること、③他人による遺言書の偽造・変造・隠匿・破棄の危険性が高いこと、④相続人において発見時に家庭裁判所の検認手続の負担が発生すること等が挙げられます。

もっとも、これらのデメリットは、2020年7月10日付けで施行された「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(遺言書保管法)による保管制度を利用することで払拭することが可能です。この保管制度の概要については、【遺言書の保管 第1「自筆証書遺言の保管制度」】をご覧下さい。

2 自筆証書遺言の方式要件

(1)遺言書の自署

自筆証書遺言では、遺言書の全文について遺言者が自書しなければ有効性が認められません。手が不自由のため他人に添え手をしてもらった遺言(いわゆる「添え手遺言」)について、最高裁判所は、遺言者が自書能力(文字を理解し筆記する能力)を備えていることを前提に、「他人の添え手が、単に始筆若しくは改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みに任されており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであり、かつ、添え手が右のような態様のものに止まること、すなわち添え手をした他人の意思が介入した形跡の無いことが、筆跡の上で判定できる場合には、『自書』の要件を満たすものとして、有効である」と述べています。

(2)日付

自筆証書遺言では、証人も立会人もいないため、客観的な作成時期を示す要素として自書された日付の存在が必要です。自書された日付の存在を欠く場合、方式違反の遺言として無効となります。

日付の存在は、同一遺言者が複数の遺言を作成した際にその前後関係を判断する上でも重要な役割を担います。

自書された日付が実際の日付と齟齬する場合、その遺言書を有効と扱うべきか否かは議論があります。この点、最高裁判例は、自書された日付が誤記であることが客観的に明らかであり、且つ、真実の作成日が遺言書の記載その他から容易に判明する場合には有効と解しております。一方で、自書日付が誤記であることが明らかである一方、真実の作成日は不明であるような場合は無効と解すべきと考える学説が多いようです。なお、このような自書日付と真実の作成日付が異なる場合、当該遺言書の作成日付は、真実の作成日とされています。

(3)署名

署名も字義通り自書が求められます。

なお、署名は、遺言者の特定のための要素であるため必ずしも戸籍上の氏名が記載されていなくとも構いません。通称やペンネームであっても、それが社会的に通用し、当該署名者が誰であるのかが客観的に特定できるものであれば、有効と扱われます。

なお、遺言書が複数枚の用紙に渡って作成されている場合でも、これらの紙が物理的に一体(背表紙によって留められている、ホッチキス留めされている等)となっているものであれば、署名は一か所にされていれば足ります。

(4)押印

押印は、わが国の法慣習に照らし、全文自書とともに遺言書作成の真正さ(作成名義人本人が作成したものであること)を担保する目的で要求されている要件です。

自筆証書遺言の要件として、印章(印鑑)の種類に関する規定はありません。ですので、市町村に登録している実印でない印鑑(認め印)で押印したとしても有効と扱われます。

なお、「指印」も民法の要求する「押印」に含まれる(指印であっても自筆証書遺言は有効)とするのが判例です。他方、「花押」は「押印」に含まれません。

3 自書要件の緩和-財産目録の添付方式

(1)自書によらない財産目録の添付方式

自筆証書遺言であっても自書せずに済む部分があります。それは、財産目録です。遺言書に財産目録を添付する場合、この目録については、自書性が求められておりません。したがって、パソコン等で打ち込んで印刷したものや、他人が代筆したものを添付するのでも構いません。法務局で取得した不動産登記全部事項証明書をそのまま添付するのでも構わないとされています。

(2)財産目録と署名押印の方法

自書によらない財産目録を添付する場合、その枚葉(各ページ)に署名及び押印する必要があります。目録が両面印刷のように紙の両面に記載されたものである場合、署名・押印も両面に行う必要があります。

ここでの押印は、遺言書本文に押捺された印章(印鑑)と同一のものである必要はありません。また、遺言書本文と財産目録の間に契印を押す必要もありません。

4 自筆証書遺言における加除・訂正その他の変更

自筆証書遺言には、他人によって容易に変造が行われやすいというデメリットがあります。そのため、法は、そうしたリスクを少しでも軽減させるため、自筆証書遺言の加除訂正についても厳格な様式を定めています。

自筆証書遺言を加除訂正するためには、①遺言者が、②遺言書上でその場所を指示し、③これを変更した旨を付記した上で署名し、④変更箇所に押印しなければなりません。ここでの押印は、遺言書作成時に用いた印章(印鑑)と別のものを用いても構いません。なお、変更日の日付の付記は必要ありません。変更された内容の遺言書が、当初作成日に作成されたものとして扱われるのです。

実際には、この加除訂正の様式性の誤りによって有効性を維持できない遺言が多数存在します。遺言作成に際しては、できる限り弁護士に相談されることをお勧めします。

第3 公正証書遺言

1 公正証書遺言の意味とメリット・デメリット

(1)公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、公正証書によって行う遺言のことを言います。具体的には、遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、公証人がこれを筆記して公正証書を作成することによって行われる形式の遺言です。

(2)公正証書遺言のメリット・デメリット

公正証書のメリットとしては、①法律の専門家である公証人の関与により方式不備による無効のリスクが極めて低くなること、②作成された遺言が公証役場で保管されるため紛失や他人による偽造・変造のリスクが極めて低いこと、③相続人は全国の公証役場において遺言の存在を検索できるため遺言が発見されないままとなるリスクが低いこと、④家庭裁判所による検認手続の負担を回避できることが挙げられます。

デメリットとしては、①公正証書作成のための手数料が発生すること、②作成に当たり公証人や証人といった第三者の関与を要する結果、遺言の存在及び内容を秘密にできないことが挙げられます。

(3)公正証書遺言の方式要件

公正証書遺言では、①証人2名以上の立会が必要です。また、証人は、遺言手続の最初から最後まで立ち会うことが求められるとされています。

②遺言は、遺言者が公証人に「口授」(くじゅ)することで行われます。「口授」について、法は「口がきけない者」のための特例を用意しています。この点は後述します。

③次に、公証人が、遺言者の口授した内容を筆記します。

④公証人は、遺言者の口授を受けて筆記したものを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させます。遺言者又は証人に「耳が聞こえない者」がいる場合も、法は特例を設けておりますが、この点は後述します。

⑤遺言者及び証人が、公証人による筆記が正確なことを証人した際は、各自これに署名し押印します。遺言者が身体的な事情等により署名できない際は、公証人がその事由を付記して署名に代えることができます。

最後に、公証人がその証書が上記①~⑤の方式に従って作成された旨を付記し、これに署名・押印することで、公正証書が完成します。

上記方式に違反して作成された公正証書は違法な手続によって作成されたものとして無効となりますが、公証人が関与する以上、そのような事態に陥ることは極めて稀でしょう。

2 「口授」と手話通訳・筆談による公正証書遺言の必要性

(1)「口授」とは

遺言公正証書の作成の際に求められる「口授」(くじゅ)とは、遺言者が遺言の内容を公証人に直接口頭で伝えることを意味します。法律が遺言公正証書の作成手続として「口授」の要件を求める趣旨は、遺言意思の真正さを担保するためと言われています。

(2)手話通訳や筆談による公正証書遺言

かつての民法は、遺言公正証書の作成手続として「口授」以外の方法がなく、例外規定も存在しなかったため、身体障害等の理由により言葉を話すことができない人は、有効に遺言公正証書を作成する術がありませんでした。

その後、社会の成熟に伴いそうした状況が疑問視され、1999年(平成11年)の民法改正の際に、「口がきけない者」は手話通訳を介するかあるいは筆談によって公証人に遺言の内容を伝えるのでも構わないというルールが新たに設けられました。

同様の問題は、「口授」だけでなく、公証人による筆記の「読み聞かせ」にも当てはまるため、やはり遺言者及び証人の中に「耳が聞こえない者」がいる際の「読み聞かせ」は通訳人の通訳によることが認められるようになりました。なお、「読み聞かせ」については、「閲覧」による代替も可能です。

3 「口授」の順序

法が本来予定する「口授」の順序は、先ほど記載したとおり、まず遺言者が遺言内容を公証人に口頭で伝え、公証人がこれを筆記し、筆記したものを遺言者及び2名以上の証人に読み聞かせ又は閲覧させ、遺言者及び2名以上の証人の承認を仰ぐというものです。

もっとも、公証実務では、遺言者等の関係者から依頼を受けた公証人が予め証書を作成し、これを遺言者に読み聞かせ、遺言者がこれを承認することをもって「口授」とし、その上で証人による承認を得て関係者の署名押印に移るといった手順が踏まれることがあります。このような形式の遺言公正証書は法律上の方式性を満たさないのではないかとして過去に争われた例がありますが、最高裁判所は、順序に変更があったとしても、全体として法が定める方式が踏まれていれば遺言は有効と判断しました。他方、遺言者が「公証人の質問に対し、言語をもって陳述することなく、単に肯定又は否定の挙動を示したに過ぎない」ような場合には、最高裁も「口授」があったとは認めておりません。公証人の多くは、元裁判官や検察官といった法律の専門家ですので、こうした判例を踏まえ、現在では手続要件の遵守は厳しく履行されているように思います。

第4 秘密証書遺言

1 秘密証書遺言の意味とメリット・デメリット

(1)秘密証書遺言とは

秘密証書遺言とは、遺言者が遺言内容を秘密にして遺言書を作成した上で、封印した遺言証書の存在だけを公証役場を通じて外部に公証させる形式の遺言を言います。

秘密証書遺言の利用件数は、自筆証書遺言や公正証書遺言と比較して極めて少ないと言われています。

(2)秘密証書遺言のメリット・デメリット

秘密証書遺言のメリットは、①自書能力がなくとも遺言が作成できること、②遺言の内容を遺言者の死後まで誰にも明かすことなく秘密にできること、③遺言の存在自体は外部に公表されるため相続人が遺言の存在に気付かないままとなる危険性が低いことが挙げられます。

秘密証書遺言のデメリットは、①公証人の関与が必要となるため手数料を要すること(金額は1万1000円で公正証書より安価)、②方式具備違反による無効のリスクが残ること(公証人は遺言書の内容を見ませんので、加除訂正等の要件違反に気付かないままとなるケースがあります。)、③公正証書遺言と異なり封印された遺言書は遺言者自身で保管しなければならないため、紛失や第三者による隠匿・破棄のリスクが依然残ってしまうことが挙げられます。

(3)秘密証書遺言の方式要件

秘密証書遺言は、①遺言者が遺言内容の記載された証書に署名・押印し、②遺言者がその証書を封筒にいれて封じ、証書に用いた印章(印鑑)を用いてこれに封印をした上、③公証人1名及び証人2名以上の前にこの封書を提出して自己の遺言である旨とその筆者の氏名・住所を申述し、④公証人がその証書の提出を受けた日付と遺言者の申述を封紙に記載し、その後、遺言者及び2名の証人がともにこの封紙に署名・押印することを要します。公証人が封紙に記載した日付が、その秘密証書遺言の作成日付となります(中に封じられた証書自体に別の日付が記載されたとしても、当該秘密証書遺言の作成日付は公証人の記載した日付と扱われます。)。

上の③でいう「筆者」とは、現に証書に筆記した人物を指します。ですので、遺言者が他人に代筆させて遺言書を書かせた場合、現実の筆記を行ったその他人が③の要件でいう「筆者」であり、遺言者は公証人及び証人に対し、この他人の氏名・住所を申述しなければなりません。

2 秘密証書遺言の加除訂正その他の変更

秘密証書遺言の加除訂正その他の変更の方式は、自筆証書遺言の場合と同様です。

すなわち、遺言書を加除訂正するためには、①遺言者が、②遺言書上でその場所を指示し、③これを変更した旨を付記した上で署名し、④変更箇所に押印しなければなりません。ここでの押印は、遺言書作成時に用いた印章(印鑑)と別のものを用いて構いません。変更日の日付の付記は必要なく、変更された内容の遺言書が、当初作成日に作成されたものとして扱われます。

自筆証書遺言と同様、秘密証書遺言においても、この加除訂正の様式を誤って無効とされる危険性が高いです。遺言作成に際しては、できる限り弁護士に相談されることをお勧めします。

3 「口がきけない者」の秘密証書遺言

公正証書遺言の場合と同様、秘密証書遺言でも「口のきけない者」の「申述」は、「通訳人の通訳」によって申述を行うことや、封紙に自書して「申述」に代える扱いが認められています。

「口のきけない」遺言者がこれらの方法を選択した際は、公証人はその旨を封紙に記載しなければなりません。

第5 特別方式の遺言の各種

1 特別方式の意味

(1)危急時遺言と隔絶地遺言

特別方式遺言は、普通方式の遺言と異なり、特殊な状況を想定した方式であり、実務上これらが利用されることは稀です。

特別方式遺言は、危急時遺言(死亡の危急に迫った状況での遺言)と隔絶地遺言(一般の交通が遮断された状況での遺言)の2種に分けられます。

(2)普通方式による遺言との違い

特別方式による遺言は、普通遺言と比較して方式要件が緩和されている一方、特別方式による遺言を行った後に普通方式遺言ができるようになった場合、その時から6か月間遺言者が生存するときは当然に失効するという特徴を持ちます。これは、普通方式遺言が困難であることを理由に方式要件を緩和する趣旨に照らし、その後の事情の変化によって普通方式遺言を行うことが可能となった際は改めて普通方式遺言によって遺言を行うべきとの立法政策上の判断によります。

(3)証人・立会人の欠格

特別方式遺言においても、証人(立会人)の適格性については、普通方式遺言と同様の扱いを受けます。すなわち、①未成年者、②遺言作成時点における推定相続人・受遺者及びそれらの配偶者や直系血族は、特別方式遺言においても証人(立会人)としての適格性を欠き、立会いが認められないため注意が必要です。これらの欠格者が立ち会って行われた遺言は、無効と解される危険があります。

2 危急時遺言

(1)一般危急時遺言

危急時遺言は、さらに、一般危急時遺言と船舶遭難者遺言に分かれます。

一般危急時遺言とは、疾病その他の事由によって死亡の危急が迫った者による遺言のことです。このような特殊な状況では、普通方式遺言よりも方式要件が緩和されます。具体的には、証人3名以上の立会いの中、その1名に「遺言の趣旨」を口授し、口授を受けた者がこれを筆記して遺言者及び他の証人に読み聞かせるか閲覧させ、証人がその筆記の正確なことを承認した後にこれに署名・押印することで作成されます。公証人がいないことを除けば、公正証書遺言と似た方式ですが、遺言者自身の署名押印は必要とされていません。これは、死亡の危急に迫られた遺言者には署名・押印の余裕がないことが想定されるためです。

一般危急時遺言では、日付の記載は要件とされていません。したがって、日付の記載の有無や正確さは、遺言の効力に影響を及ぼしません。

一般危急時遺言は、遺言の成立日から20日以内に証人の一人または利害関係人(相続人等)が家庭裁判所に請求し、「確認」を得なければ無効とされます。これは、死亡の危急に迫った病人に対し、一部親族ほか利害関係人がその者の真意に基づかない危急時遺言をさせる弊害を避ける趣旨で設けられた規定です。家庭裁判所は、その遺言内容が遺言者の真意に出たものであるとの心証を抱かなければ、これを確認することができないとされています。なお、ここで家庭裁判所が「確認」を行ったからといって、当該遺言の有効性が確定することにはなりません。当該遺言に不審な点があれば、相続人等の利害関係人は、「遺言無効確認訴訟」を提起して、その有効性を争うことができ、ここで勝訴すれば「確認」を受けた遺言であっても無効な遺言とされます。

また、自筆証書遺言と同様、一般危急時遺言でも上記「確認」とは別に検認の手続を要します。「確認」手続と「検認」手続は、目的と内容を異にする別個独立の制度です。

(2)船舶遭難者遺言

船舶遭難者遺言とは、船舶遭難に際し船舶中で死亡の危急に迫られた者に認められる遺言形式です。具体的には、遺言者は、証人2名の立会のもと、口頭で遺言の趣旨を伝え、証人がその趣旨を筆記してこれに署名押印し、かつ、証人の1名または利害関係人が遅滞なく家庭裁判所に請求してその「確認」を受けることで有効に遺言を行うことができます。

船舶遭難者遺言では、証人の中に署名または押印をすることができない者がいる場合、他の証人がその事由を付記することで、なお有効性を維持することができます。普通方式遺言と比較すると、方式面で相当の緩和を受けた規定と言えます。

3 隔絶地遺言

隔絶地遺言には、伝染病隔離者遺言と在船者遺言の2種があります。

伝染病隔離者遺言は、文字どおり伝染病により社会的な隔離を余儀なくされた者に認められた遺言形式です。伝染病を理由とする行政処分によって交通を断たされた場所にある者は、警察官1名及び証人1名以上の立会いをもって遺言書を作成することができます。

在船者遺言は、船舶中に在る者が利用できる遺言形式です。これらの者は、船長または事務員1名及び証人2名以上の立会をもって遺言書を作ることができます。

これら隔絶地遺言では、遺言者、筆者(代筆の場合)、立会人及び証人が各自遺言書に署名・押印する必要があります。自筆証書遺言ではありませんので、自書性の要件はありません。パソコンで作成し、印字したものでも遺言書とすることができます。証人の中に署名または押印をすることができない者がいる場合、他の証人がその事由を付記することによりなお有効性を維持することができます。証人または立合人の中に署名・押印できない者がいる場合は、他の証人がその事由を付記することでなお有効性を維持できます。

遺言についてご相談をされたい方は、是非お気軽に弁護士法人グレイスにご連絡下さい。
初回相談は60分無料で、来所が困難な方は電話やZOOMを利用したオンライン相談も受け付けております。まずはお電話でお問合せください。
0120-100-129
(※2回目以降は相談料として30分5500円を頂いております。)

遺言の効力

関連する記事はこちら