私に遺留分は認められますか ~遺留分権利者~

私に遺留分は認められますか ~遺留分権利者~

私に遺留分は認められますか ~遺留分権利者~

(1)兄弟姉妹には遺留分が認められない

先の記事で、遺留分は、「一定の親族関係(法律上の養親子関係を含む)にある相続人」に認められる権利だとお伝えしました。ここでのポイントは、単なる「相続人」ではなく「一定の親族関係」にある相続人に限定されているということです。結論からいうと、被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められません。
法律は、配偶者は常に相続人となると宣言した上で、被相続人の親族に対して相続の順位を1位から3位まで設け、先順位の親族がいない場合のみ後順位の親族が相続人となると定めています。具体的には、1位は子、2位は直系尊属(両親・祖父母など被相続人と直系の関係にあり且つ世代が前の地位にある者)、3位は兄弟姉妹です。つまり、被相続人に子がおらず、相続開始の時点(被相続人の死亡時点)で既に直系尊属が全員死亡していた場合に初めて第3順位である兄弟姉妹が相続人の地位に就きます。もっとも、先ほど述べたように、兄弟姉妹には遺留分が認められません。そのため、例えば、被相続人が生前に、「自らが死亡した際は、全財産を〇〇市に寄付する」という遺言を行っていた場合(このような、遺言を用いて行う贈与のことを『遺贈』といいます。)、子や直系尊属であれば自らの遺留分を主張できるのに対し、兄弟姉妹には何の権利も残っておらず、相続人として遺贈の実現に協力しなければならない立場に立つのみです(具体的な協力内容としては、たとえば不動産があるなどは、その登記手続に協力する義務を負います。)。

(2)相続放棄をした者には遺留分が認められない

遺留分は、相続人のうち一定の親族にのみ認められた権利です。「相続人」であることが必要であるため、相続放棄をした方には、もはや遺留分は認められません。相続放棄をした者は、相続開始時、つまり被相続人の死亡時に遡って相続人の地位を失うからです(相続人ではないことになります。)。相続放棄は、相続が開始されたことを知った後、原則として3ヶ月以内に行うことになりますが、たとえば3ヶ月ギリギリで行ったとしても相続開始当初から相続人でなかったことになり、その結果、遺留分も失うことになるのです。

(3)出生すれば胎児であっても遺留分が認められる

法律は、権利や義務といった目に見えない観念の発生・消滅・移転を扱います。そうしますと、権利や義務が誰に帰属するのかという点(権利の帰属主体の問題)がとても大事です。原則として、権利・義務の帰属主体は、生きている人に限られます。そうすると、「どの時点で生きている人と認められるのか」(人の始期)という問題が沸きます。この点について民法は、「私権の享有は、出生に始まる」(民法3条1項)という規定を用意し、胎児は原則として権利を獲得したり義務を負うことはできないこととしています(なお、「出生」の解釈をめぐっては、身体の「全部」が母体から露出した時点を指すというのが民法上の通説です。)。そうすると、相続開始時(被相続人死亡時)にまだ胎児が出生していない場合、胎児は未だ権利・義務の帰属主体になれず、相続人になれない(当然、遺留分も持たない)ことになりそうです。
もっとも、日本では、そのような胎児の不利益に配慮し、胎児については相続開始後に出生した場合、相続開始時にさかのぼって相続権を取得するという相続法上の特別の規定を設けています。その結果、出生した胎児は事後的に第1順位の相続権を取得し、当然に遺留分も獲得することとなります。

(4)相続欠格者・被廃除者には遺留分が認められない。

「相続欠格」や「相続人の廃除」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。
いずれも、本来は相続人の地位に立つはずの者の相続資格を否定する制度です。「相続欠格」とは、被相続人の意思や意向を問うことなく、本来相続人の地位に立つはずの者の相続資格を当然に剥奪する制度を言い、「相続人の廃除」とは、相続人の意思により家庭裁判所が推定相続人(相続が開始した場合に相続人の地位に立つ者)の相続資格を剥奪する制度を指します。2つの制度の違いは、被相続人の意思が関与するか否かであり、共通するのは相続人の相続資格を奪うという点です。相続欠格は、被相続人や先順位相続人の殺害・遺言書の偽造など法が想定する相続制度の基盤を破壊する行為をした場合に対する公的な制裁としての性質、廃除は、被相続人に対する虐待や重大な侮辱行為があった際に被相続人による相続人への制裁としての性質を有します。
相続欠格・廃除のいずれにおいても、これが認められた場合、その者は相続資格、つまり相続人たる地位を失います。遺留分というのは、あくまで一定の「相続人」に対してのみ認められる権利ですので、たとえ被相続人の配偶者や子であっても、相続欠格・廃除が適用された場合、もはや遺留分も認められないこととなります。

(5)子の代襲相続人の遺留分

相続が開始された時点で既に被相続人の子が死亡していた場合、その子にさらに子(被相続人から見た孫。以下、この立場にある人を「孫」と呼びます。)がいる場合、孫が親の相続人の地位を承継します。これを「代襲相続」といいます。
代襲相続により、原則的に、孫は、祖父または祖母の相続人の地位を有することになり、それによって遺留分も取得します。親(被相続人から見た「子」)が相続欠格や廃除を受けて相続資格を失っている場合であっても、孫は代襲相続により祖父母の相続権を持ちます。
もっとも、親が相続放棄を行っている場合、孫の代襲相続は認められません。その結果、孫は遺留分すら取得できないこととなります。

以上、遺留分権利者となるのは誰かという点について説明を行って参りました。次は、遺留分の具体的な計算方法について説明を行います。ここは、遺留分を理解する上でとても重要な部分となります。

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